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story2 お酒と料理のハーモニー〜ワイン編
美味しい料理をいただきながら、おいしいお酒を味わう・・・至福の時間ですよね。手をかけた料理にお酒を一緒に合わせたり、友人とのとっておきの食事の時間にお酒をいただいたりすること、ありませんか?

今回はお酒の中でもワインをとりあげて、ワインと料理を合わせる一つのコツをご紹介します。肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワイン、とお考えの方も多いと思いますが、発想を変えることによって様々な組み合わせを発見できますよ。
 

■お話:ワインアドバイザー 浜砂じゅんこさん(プロフィール)

 

食品のタイプ分け
料理の話をする前に、その素材となる食品を考えてみます。

ワインもそうですが、食品は加工をしたり保存をしている間に、その中に含まれている成分が変化します。
例えば、空気中の酸素による酸化反応、微生物による腐敗や発酵、調理などの加熱などが挙げられます。また肉や魚などの動物性食品も、その動物が運動量のある生き物かどうか(運動量が多いと「乳酸」が多く、少ないとグリコーゲンが多い)、さらに季節によっても「脂」ののり方が違うということは私たちも経験していることと思います。 つまり、同じ食品を一つとっても、同じ成分が含まれているというわけではありませんし、時間がたてば、またそれも変化することがあるということです。

藤原正雄さんによるとこれらを踏まえ、また食する温度も考え合わせると、おおよそ3つのタイプに分類ができるということです。

・生まれたてのもの
・できたてもの
・動物性食品では、あまり運動しないもの
「さわやかな旨味」のあるもの =
冷旨系
(冷えている方が旨い)
・しだいに年季が経ったもの
「コクのある旨味」のあるもの=
中間系
(ほどほどに冷やすと旨い)
・相当年季が経ったもの
・動物性食品では
・長時間運動するもの
「苦みや刺激のあるもの」=
温旨系
(室温くらいが旨い)


たとえば、動物性食品で言うと乳酸よりグリコーゲンの多いひらめ、かれい、たこ、なまこ、ほや、かきなどは「冷旨系」に入るでしょう。この中には他に肉ならばにわとり、生卵、脂肪分の少ないヒレ肉などが挙げられます。
「コク」の旨味が加わってくる物として魚は、ぶり、はまち、さんま、いわしなど。肉ならば乳酸も多い牛肉などが入ります。 調味料ではさっぱりしたものが「冷旨系」に入ります。しぼりたてレモンやかぼすの果汁、塩、梅肉など。逆に発酵食品である醤油や味噌は「温旨系」に入ります。

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ワイン中に含まれる成分によるタイプ分け
ワイン中には600以上もの化学成分が含まれていると言われています。水分を除くとアルコール、味の成分、炭酸ガス、香りの成分などがあります。その中で味の成分である「有機酸」と呼ばれるものに注目してみます。

「有機酸」というと難しいかもしれません。生物の生命活動において作り出される酸のことです。最近「酢」がブームのようですが(商品にもよりますが)それに含まれている「クエン酸」や「酢酸」「リンゴ酸」などがこれにあてはまります。

ワインの原料であるブドウの中にも、ワインにもこの「有機酸」は多く含まれています。ただし、先に述べましたように「発酵」というプロセスを経ますので、ブドウとワインでは含まれる「有機酸」の種類が異なります。特徴的なのはブドウに含まれる「リンゴ酸」。この「リンゴ酸」は5℃前後に冷やすと爽やかな酸味を感じます。これが発酵するにつれて「乳酸」に変わっていきます(肉にも含まれている成分です)。「乳酸」は20℃くらいでまろやかでのどごしの良い味となります。

さて、この「リンゴ酸」→「乳酸」になる過程のことを「マロラクチック発酵」と言いますが、この進み具合によって、ワインも3つのタイプに分けることができるのです。

 

「リンゴ酸」の多いもの
冷旨系
ドイツワイン、国産の甲州などの白
「リンゴ酸」と「乳酸」が半々
中間系
ボージョレ・ヌーボーなどの軽い赤、ブルゴーニュのコクのある辛口の白
「乳酸」の多いもの
温旨系
ボルドー、ブルゴーニュなどの本格的な赤

 

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ワインと料理を合わせてみましょう
さて、食品もワインもそれぞれ3つのタイプに分けましたが、同じタイプのもの同士で合わせるとよく合います。
ただ1回の食事でいろいろな素材の料理をいただくにもかかわらず、普通は何本もワインを用意できないと思います。

そのときは調理法や調味料で合わせれば良いのです。

例えば、同じ豚肉を使った料理でも、しゃぶしゃぶにしてだいこんおろしとともにキュッとレモンを上から絞って一緒にいただくと「冷旨系」のワインが合います。 逆に生姜焼きや味噌をつけて焼くと「温旨系」のワインに合うようになります。

また鯖の料理でも、焼き鯖にして醤油をかけて食べるなら(鯖も醤油も乳酸が多い食品です)、「温旨系」のワインに合いますが、酢じめにして押し寿司にすると「冷旨系」のワインが合うようになります。

同じ素材でも料理方法や調味料を変えてワインを合わせてみると、いろいろな発見があったり、楽しみ方もぐんと広がりますよ。

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料理の色と合わせてみても・・・
世界最優秀ソムリエコンクールで優勝された田崎真也さんは、料理の色にワインの色を合わせれば良い、と紹介しています。私もお客様からよく「今晩の料理」にどのワインを合わせたらよいか尋ねられたときは、そのお料理に使われる食材や調味料をき、食卓の風景を想像してワインをおすすめしています。

料理とワインの相性には決まったルールはないと思います。今回はワインに含まれる「有機酸」に注目しましたが、他にも味に関係する成分はありますし、単純にワインと言っても星の数ほど種類があります。今回は相性に悩む方々に、それを考える上でのヒントとなればと思います。

むしろさまざまにアイディアをめぐらせてハーモニーを楽しんでいただきたいと思います。
そして、もう一つ、ワインと料理の相性を良くする最高の調味料は「食卓を囲む雰囲気」だと私は思います!

 

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さて、福岡の名物の「モツ鍋」。先日、お客様に「モツ鍋」に合うワインを尋ねられました。
私を含め、お店のスタッフはそれぞれ違うワインを思い浮かべたのですが・・・。
今年の冬あたり、ご家庭の味付けの「モツ鍋」に合うワインを探してみませんか?

(参考文献:渡辺正澄、藤原正雄:醸協,83,171(1998)
田崎真也「うなぎでワインが飲めますか」角川書店)